≪ 熊の話 ≫

                   瀬川 仁子

 雲南懇話会(雲南省の梅里雪山を中心とする雲南・チベット地域に興味、関心をも つ人が集い、様々に情報を交換しようとする会)の講演会で興味深いクマの話を聞 くことができました。 雲南懇話会と講演をして下さった東京農業大学 山崎晃司教授の承諾をいただきま したので、その内容をかいつまんでお話しようと思います。
 まず、クマは大きい動物と思っている方が多いですが、ツキノワグマに関してはオ スは人間の男性、メスは人間の女性とほぼ同じ大きさです。では講演の概要です。


「ツキノワグマと出会ったらどうする」

  東京農業大学 山崎晃司教授


 ツキノワグマと人との間での軋轢の頻発、特に人身事故の増加が社会的な問題と なって既に10数年が経っています。特に2016年以降はその増加が著しく、連年的 な現象として捉えられています。クマの捕獲数も高止まりを続けており、2019年 には5,000頭以上が捕殺されました。(この状況が続けば将来ツキノワグマは絶 滅危惧種となってしまいます。) 大きな背景として、山間地域での過疎、高齢化、また森林利用の低下により、ク マの分布域の拡大と生息密度の増加が考えられています。よく言われる奥山のク マの生息環境としての質の低下は原因ではありませんし、ドングリなどの食物不 足も特定の地域、特定の時期の理由にはなりますが、すべてを説明するものでは ありません。(クマの生息域の拡大は森林の拡大と連動しています。耕作放棄地 が森林化したり、カヤトが森林化することによってクマの分布域が広がっている のです。また親が捕殺されてことにより人間との接し方がわからない子グマが多 くなった事も一因です。) クマは九州では1940年代に絶滅し、四国でも風前の灯火となっていますが、本州 では世界でも稀有な数万頭の集団が残っています。今や森のあるところにはクマ がいると考えて行動することが求められています。北米では数十年前から常識で あった、自然公園利用の際のベアプルーフ(クマよけのフードコンテナ)の必要 性を、今年の上高地テント場での人身事故の発生は教えてくれました。 実はクマに会ってからの対策を考えるのではなく「クマに逢わないように最大限 の努力をする」ことが肝心です。クマのような大型動物の住む森を歩く楽しさを 今後も残していけるように考えていきたいと思います。
推奨する対策
・テントと調理するところを離す
・においの強い料理は控える。調理の残飯を埋める事や焼くことも止める
・クマは目が悪く、聴覚も鋭くないので沢筋・風の強い日やガスの濃い日の行動を 控える
・バリエーションルートは避ける
・クマの想定より速い移動、例えばトレランやMTBは避ける
・クマよけ鈴より声を出したり、手をたたいた方が効果的
私たちの会では上記を完全に守ることは不可能ですが、、、
またもしクマに出会ってしまったら顔・頭を防護して死んだふりをすることは有効 のようです。